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水曜日の彼 [王子]

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夕暮れの街角~♪
彼に会った。


自転車で角を曲がったら、判別できるかできないかギリギリ離れたところに立ち、ずっとこっちを見ている少年がいました。
大きめの帽子が顔を半分隠していたからすぐにわからなかったけれど、
通り過ぎる頃やっとわかった。


「そうだと思ってずっと待っていたんだよ」

王子!
王子じゃないのっ!


王子が通っていたきゃーが問題になり、年長さんになる頃に幼稚園を変わったこと、
小学校も少し離れたところにかよっていることを風の噂で聞いていました。
そう、あの王子も春から一年生になって、ひとりで電車に乗って学校に通っていたのよ。
偉大なる進化だわ。


自転車の後ろにつけられた子供用の椅子と、カゴの中のヘルメットをみて王子が言ったのは
「子供産んだのかい?」

あー懐かしい。「かい?」っていうのがとっても懐かしい。

でもね王子、わたしは子供なんか産んでいないのよ。

「これから保育園までお迎えにいくのよ」
「ボクのところには来れなくなったくせに、そいつの所には行くのかい?」

あああぁぁぁ、、、
うううぅぅぅ、、、
それを言われるとつらい。
王子、これには深い理由があって、わたしは仕事に復帰して
どうしても水曜日に時間がとれなくなってしまったのよ。
大嫌いになったとか、そういうことじゃないんだから。
いや、正直いうと、あなたのママはあんまり好きではなかった。
いやいや、時間の都合がつかなかったのよー。

わたし、ここで刺されてしまうんでしょうか。
それとも殴られるのでしょうか。
三角関係のど真ん中に置かれている錯覚さえしてきます。
王子には唇を奪われた仲、これから会いにいく‘せんぱい’とてちゅうをしているばかりか
お風呂だって一緒にはいる関係。
お願い、喧嘩をやめて。
わたしのために争わないで。
あなたに対する愛よりも今の彼に対する愛のほうが大きいかもしれないの。
6歳と3歳だけれど。


「そいつと仲良くするんだよ」

しますとも。
こう言っちゃ何なんですが、3歳当時の王子よりも‘せんぱい’のほうが人間として
ビックだ、、、、、わよ。
‘せんぱい’もそれなりにアレだけれども、前の男の前では幸せなふりしたいじゃない。
そういうことよ、王子。


とはいえ、なにゆえキミはここにいる?
あそこ駅で乗り換えて二つ目がキミの最寄り駅じゃないの。

「ここを歩いていればmasaさんに会えるような気がしたんだ」

なんていうことをいうのよ、あなた。
泣けてくるじゃないの。

きけば、乗換駅で降りるお友達がいて、
ついつい一緒に改札を出てしまうらしい。

「ここまで来れば、いつもお散歩で歩いていた道だから
全然こわくないよ」

そうなんだけれども、確かにその通りなんだけれども、
電車に乗れば3分でも歩くとなればかなりの距離。
しかもこの暑さ。
水筒を提げて、汗びっしょり。
ランドセルって背中がとくに暑いのよね。


「王子、一人で帰れるの? 自転車で途中まで送っていってあげる」

「いいんだよ。もうすぐだからボク歩けるよ」
そういうと、誇らしげに水筒の中身を飲み、またねとも、ばいばいとも言わず
ひとりで歩いていってしまった。

「今度遊びにきてっ! おねーちゃんも待っているから!
本当に一人で大丈夫なのね! 気をつけるのよ!」

後ろ姿にそう声をかけるのが精一杯。


久しぶりの王子は背も伸び、顔つきもすっかりお兄ちゃんになっていました。

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ゆっきぃ

泣きそう……


by ゆっきぃ (2010-09-08 19:31) 

ほーりー

きゅうーーーん。。。
by ほーりー (2010-09-10 17:04) 

masa

*あの日から、同じぐらいの時間に外を歩くと
ついつい彼を探してしまうわ。
あー、やだやだ。
ますますふられた女みたいじゃんね。
by masa (2010-10-03 06:09) 

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